東京工科大学 応用生物の広場東京工科大学

研究室の紹介

新しい研究室ができました

2020/10/30 | 固定リンク 投稿者: 応用生物学部スタッフ

東京工科大学・応用生物学部、先端化粧品コース新任の吉田雅紀です。10月に着任し皮膚生理学研究室という研究室を作りました。

長く化粧品会社にいましたが、ここ20年くらいのほとんどを色々な大学を職場にして過ごしてました。当研究室ではシミや白斑の改善や治療を目的に、表皮細胞の増殖分化機構の解明や表皮細胞による色素細胞遊走制御機構を中心に研究しており、皮膚の透明化技術を使用する組織化学的解析などをよくやっています。

また最近では、産毛を抜いて付着した細胞を網羅解析して局所の皮膚の状態を診断する肌診断方法の完成も目指しています。大好きな大泉洋のバラエティを見ていて思いついた方法なんですが、皮膚は生きた細胞が露出してないので診断目的で生きた細胞を取るのはハードルが高いのですが、産毛は全身の皮膚にあってその抜毛は美容法に使われるくらい低侵襲なのに簡単に細胞が取れるんです。現在は古巣の長浜バイオ大学と特許提出して色んな解析への応用にトライしています。

My
産毛の付着細胞

培養細胞の変化を数式で表す

2020/02/14 | 固定リンク 投稿者: 応用生物学部スタッフ

今回は、研究室で行っている細胞応答のモデリングの研究について紹介します。

一般に、細胞株を用いる培養細胞の実験では、細胞を植え替える継代培養を行います。このときに、シャーレに接着している細胞をタンパク質分解酵素のトリプシンを使っていったんはがしてから、新しいシャーレに植え継ぎをします。平べったく張り付いていた細胞は、はがれて球形になって、再び接着して平べったくなり、増殖していきます。この変化を見るために、水晶振動子というセンサーの上で細胞を培養して、水晶振動子の共振周波数の変化を測定すると、接着過程の変化が一次遅れ応答関数という式で表されることがわかりました。この一次遅れ応答関数は、化学反応の一次反応速度式の濃度変化の式に似た変化をします。

さらに、抗がん剤などの細胞死を起こす化学物質を入れると、細胞はだんだん弱って死んでいきますが、測定の結果では、細胞死を起こすプロセスは、多くの場合2段階で起きていることが分かってきました。この反応は、多くの細胞の細胞周期がばらばらの場合は、少しずつ時間がずれるため、対数正規分布という関数で表されることが分かりました。共振周波数変化は、時間差のついた2つの対数正規分布関数で近似することができ、式の大きさを調整するパラメーターから細胞の生存率などを見積もることができます。また、薬物がどのように作用しているのかを調べることにも利用でき、今後、新しい細胞応答の評価方法として発展できるのではないかと期待しています。

生命ナノ工学研究室 村松宏

Photo_20200214144001

もろみ酢から開発した新規乳酸菌飲料 「美らBio」 の誕生

2018/09/12 | 固定リンク 投稿者: 応用生物学部スタッフ

皆さんは、「産学共同研究」という言葉を聞いたことがありますか? 大学と企業が互いに得意とする技術を提供し合って、協力して研究に取り組みます。各々が単独で研究に挑むよりも、効率よく研究を進めることができます。得られた研究成果は地域経済の活性化に繋がる場合もあることから、大学に対する地域社会からの期待が高まっています。このような背景から、生化学研究室においても産学共同研究を数多く展開してきました。今回のブログでは、これらの産学共同研究の研究成果の一つである「美らBio(チュラビオ)」について紹介したいと思います。

お酒が好きな方の中には、泡盛を飲んだことがある方もいらっしゃると思います。沖縄の代表的な特産品の一つである泡盛は、タイ米を原料とするお酒です。この泡盛の製造工程では、搾った残渣(もろみ粕)が生じます。泡盛の醸造元である(株)石川酒造場(沖縄県西原町)では、泡盛の副産物であるもろみ粕から、世界で初めて「もろみ酢」を製造しました。もろみ酢には黒麹菌のはたらきで作られたクエン酸や必須アミノ酸が豊富に含まれており、健康飲料として親しまれてきた歴史があります。その一方で、もろみ酢の独特の風味を苦手と感じる方がいるという点については、長年の課題とされてきました。そこで(株)石川酒造場と琉球大学農学部では、乳酸菌による発酵技術を利用してもろみ酢の風味改善に挑んできました。研究開始から多くの試行錯誤を経て誕生したのが、まろやかな味わいが特徴の乳酸菌発酵飲料「美らBio」です。

1

どんなに良い製品が完成しても、それだけでは販売には至りません。製品を長く販売していくためには製品のコンセプトの決定が大変重要であり、ターゲットとする購買層(男女、年齢、生活スタイル等)、原価、パッケージデザイン、大量生産化、販売網の確保など、検討項目は多岐にわたります。当研究室は(株)石川酒造場からの依頼を受け、美らBioの製品コンセプトを検討するための産学共同研究に参画してきました。

当研究室では、マウスに対して高脂肪食と同時に美らBioを一定期間摂取させ、美らBioの健康機能性を評価しました。その結果、美らBioを摂取させたマウスでは、内臓脂肪の蓄積や血中コレステロール濃度が抑制されていることが明らかとなり、肝機能の改善も確認されました。食品に関するエビデンスの収集はその食品の価値を高めることに直結することから、研究者の立場から今後の美らBioの展開やもろみ酢市場の活性化に期待しています。

最後にもう一つ。9/10に東京ビッグサイトにおいて、「ダイエット&ビューティーフェア2018」が開催されました。今回で17回目となる本フェアは、コスメ・美容機器・サプリメント・インナービューティー等に関する新たなトレンドや商機を生みだすための情報交流の場として、毎年3万人近い来場を集めます。本フェアでは、数多くの優れた美容健康商材の中から「地域の魅力を発揮している最も仕入れたいアイテム」を選出し、「ジャパンメイド・ビューティアワード」として表彰も行っています。今回、栄えある最優秀賞に輝いたのは、我らが「美らBio」だったのです!

2

当研究室では、美らBioに限らず、卒業研究の中で産学共同研究に関する研究に取り組んでいただくことがあります。「自分が明らかにした研究成果が将来の製品化に繋がるかもしれない」と考えると、卒業研究に対するモチベーションも上がるのではないでしょうか。高校生の皆さん、在学生の皆さん、当研究室で食品科学(発酵食品)研究やスキンケア研究に取り組んでみませんか?

生化学研究室 野嶽勇一

3

4月に着任しました!笠井智成です。

2018/05/16 | 固定リンク 投稿者: 応用生物学部スタッフ

はじめまして。笠井智成と申します。Blogで紹介する機会を下さいまして、応用生物学部スタッフの皆さまありがとうございます!よろしくお願いいたします!!

着任して約1か月半になりましたが、東京工科大学は建物も庭園もキレイで、キャンパスは広々として美しく明るく、毎日楽しい気分で過ごしています。先日、友人の他大学の先生が研究打ち合わせに来てくれたのですが、打ち合わせや施設案内の際もずっと学内風景の写真撮影をして、「設備も充実していてスゴイですね」と羨ましがっていました。

さて、研究テーマについてですが、「がん」について色々と進めています。中でも「がん幹細胞」に興味を持っています。新しい薬の開発や、スクリーニング法の開発など、応用生物学部の先生方ともコラボの相談をさせて頂いています。色々な特徴を持った「がん幹細胞様」の細胞モデルを作れるので、それぞれの分野の先生方の得意な技術や興味のある研究テーマに合わせて、一緒に進められるようにする準備に取り掛かっています。また、がん化しにくいiPS細胞や、がん化しにくくする制御法の開発にも興味があるので、再生医療に貢献できるような研究もできれば幸せです。さらに、企業や他大学との共同研究も推進していきます!

これまで行ってきた研究の一例として、先日Twitterでも紹介させていただいた写真ですが、正常なマウスiPS細胞から作製した「がん幹細胞モデル」です(Neha N, et al. “A cancer stem cell model as the point of origin of cancer-associated fibroblasts in tumor microenvironment.” Sci Rep. 2017. 7(1):6838. doi: 10.1038/s41598-017-07144-5.)。この細胞では未分化マーカーを発現している細胞で緑色蛍光が観察されます(下写真)。

1

少しでも興味をお持ちの方、詳しい内容を聞きたい方は片研の生体環境創薬学(笠井)研究室まで、ご遠慮なくお越しください!!

はじめまして、野嶽勇一です。

2018/04/25 | 固定リンク 投稿者: 応用生物学部スタッフ

はじめまして、野嶽勇一です。この度、生化学研究室の教授として着任しました。趣味は似顔絵、野球、ドラマ視聴、東スポ購読、ビール、カラオケ(ジャニーズ系)です。苦手なものは、虫とミッキーのTシャツです。好きな食べ物は、ハンバーグとからあげクンチーズです。最近、焼売が好きなことに気付きました。やはりヨコハマの血が流れている…。

さて、大きな魅力でいっぱいの小さな世界に関するお話を少々。私たちの身体には数多くの細菌が生息していることを知っていますか?これらの細菌は「常在菌」と呼ばれ、私たちの健康状態に深く関わっています。常在菌の中でも特に有名なのが、腸に1,000兆個以上も存在している「腸内細菌」です。腸内細菌の中には乳酸菌やビフィズス菌のように、腸内の環境を整えるはたらきをもつ、いわゆる「善玉菌」がいます。これらの善玉菌は免疫力を高めたり、コレステロールを減らしたりすることにもパワーを発揮して、私たちを支えてくれています。生きた善玉菌を含むプロバイオティクス(ヨーグルトなどの発酵食品)やプレバイオティクス(食物繊維やオリゴ糖等)を食べる機会を増やしていきたいですね!

最近では、皮膚に生息する「皮膚常在菌」の存在も注目されています。皮膚常在菌の中にも、皮膚の健康状態に貢献する心強い善玉菌がいるのです。表皮ブドウ球菌です! 表皮ブドウ球菌(画像)は古くなった皮脂を、皮膚に潤いを与えたり肌荒れを防いでくれたりする物質に変えてくれます。表皮ブドウ球菌には「美肌菌」というニックネームが付けられているように、まさに「天然のスキンケアクリーム」を作ってくれるのです。艶やかで健康的な肌づくりのために、美肌菌にも注目してみましょう!

Bihadakin

このように、おなかやお肌の状態を改善する上で、常在菌と善玉菌の関係は大変重要です。私は善玉菌が示す有用作用を解析し、そのパワーを活用して常在菌全体を好ましい状態に改善するための食品研究やスキンケア研究に挑戦しています!これまでに、乳酸菌が産生する物質がガン細胞の増殖や肝障害の進行を抑制することを見出しました。また、脂質代謝や薄毛、アレルギーに対する有効性も示しています。腸内細菌叢の制御をはじめとした作用機序の解明に関する研究成果も得ています。また、「自分の美肌菌」を「直接的に活用」した新しいスキンケア法(「美肌菌戻し法」と命名)を構築し、世界初の美肌菌化粧品の開発にも至っています。現在は、アトピー性皮膚炎に対する美肌菌の応用研究に奮闘中です。これまでに得た知見をもとに、多くの食品・飲料・化粧品メーカーとの間で製品開発を目的とした産学共同研究にも積極的に取り組んでいます。

最後に、講義・実習に対する意気込みです。生化学、食品製造学、食品実験等を担当します。「理解してもらえたら、講義は楽しくなる!」と信じています。説明に必ずひと手間かけることを自分に課して、学生の皆さんが次も受講したくなるような情熱溢れる楽しい講義にしていきたいと思っています。どうぞ宜しくお願いします!一緒に頑張りましょう!

はじめまして

2018/04/09 | 固定リンク 投稿者: 応用生物学部スタッフ

皆さん、はじめまして。岡田麻衣子です。今年の2月より矢野研究室の助教に着任致しました。新人とはいっても、昨年は実験講師として食品コースや化粧品コースの実習に参加させていただいておりました。それを縁に今でも声をかけてくれる学生さんが沢山いて、大変嬉しいことです。大学では講義や実習で学生の皆さんと交流することが多いと思いますが、ぜひ通りすがりにもお気軽に声をかけてもらえると嬉しいです。

そんな私の研究室以外の生息地は、主にフードコート前の庭園になっております。たまにその周辺の白黒ハチワレ模様のネコがいて、そのネコを眺めるのにはまっております。まったく懐いてもらえず、ツンデレのツンしかありませんがそれまたネコの魅力なので仕方がないでしょう。気が向いたら写真を撮ったりしています。下の写真は昨年の秋頃のものす。工科大は花や木々が季節ごとに移り変わるので、それも楽しみの一つですね。

1


さて、研究はというと私は乳がんの研究をしております。女性では11人に1人が乳がんになる可能性があります。この数は少ないと思いますか?それとも多いと思いますか?実は女性がかかるがんの中でNO.1というとても身近ながんなのです。乳がんが発生する仕組みや増殖する仕組み、そして治療する仕組みの鍵となっているのが『女性ホルモン』である“エストロゲン”とその作用の実行部隊である “エストロゲン受容体”というタンパク質です。

このような女性ホルモンは、元来はもちろん身体に良い働きをしています。例えば、子宮や乳腺などにおいて妊娠・出産に必要な身体の発達を促すのは代表的なエストロゲンの作用ですね。また、多くの女性が加齢によりエストロゲンが少なくなると、骨粗鬆症になることが知られています。これはエストロゲンには骨増強作用があるためです。では、このような身体に大切な作用をもたらすエストロゲンが、なぜ乳がんのリスクとなる諸刃の剣となるのでしょうか?

この謎を解き明かすためにエストロゲンの指令を実行するエストロゲン受容体の働きを研究しています。働き、といってもエストロゲン受容体のみを調べるわけではありません。例えば、会社ではプロジェクトに応じたメンバーでグループワークをすることがありますよね。また、みなさんが行う実習などでも、時にはグループ内で役割分担をすることがあるでしょう。細胞内ではヒトの社会 と同じように、何か機能を効率良く発揮する際に、目的に見合ったタンパク質群がグループ(複合体)を形成し、役割分担をしながら協調的に働くことがままあります。時には専門的な役割をもつタンパク質を招きいれて、臨機応変さを兼ね備えます。

エストロゲン受容体もタンパク質ですから、例外ではありません。エストロゲンからの指令を受け取ったエストロゲン受容体も、各々固有の機能をもったタンパク質群と 目的に見合った複合体を形成して活躍していると言われています。ですので、先にお話したエストロゲンの諸刃の剣となる作用を解明するに、正常な細胞やがん細胞あるいはがん細胞の種類で、エストロゲンと一緒に働くはタンパク質がどのように変化するのか?変化するとエストロゲンの指令はどのように実行されてしまうのか?ということを明らかにしたいと考えています。おそらくがん細胞ではまだ発見されていない、新しいエストロゲン受容体のパートナータンパク質や役割があるのではないでしょうか。そのようなタンパク質を発見して、がんをはじめとする疾患の新たな分子治療薬の開発に貢献していきたいと考えています。

こんなにエストロゲン受容体の話ばかりして何ですが、エストロゲン受容体と似たような構造をもつ受容体がヒトでは48種類ありそれぞれに対応する生理作用や疾患が存在します。男性ホルモン受容体もその一つですね。エストロゲン受容体の仕組みを知ることで、これらの多くの受容体に関わる生理作用や疾患の解明にも応用しながら研究を進めています。

随分と漠然な内容をお話しましたが、乳がんにおけるエストロゲン受容体の働きについて、具体的には『転写制御機構 』といったゲノム情報を“選択”する仕組みや、『DNA修復機構』といったゲノム情報を“維持”する仕組み、いずれの制御にも密に関わる『タンパク質分解制御機構』に着目して研究を進めています。もし興味があればお気軽にお声かけ下さいね。

植物由来の化粧品作りに挑戦中

2018/03/22 | 固定リンク 投稿者: 応用生物学部スタッフ

応用生物学部化粧品材料化学研究室の柴田です。

さて、前回の復習からです。昨年のブログ「黄色は最強であるという話(2017/06/28)」にて、プロ野球球団のチームカラーと光の波長エネルギーとの関係を考察し、当時セ・リーグの上位3チームであった、赤、オレンジ、黄の中では黄色の我が球団がエネルギー的に優位であるという学説を提示しました。

そして結果は・・・。愛すべき黄色の球団は、よりエネルギーの高い青色球団に泥んこクライマックスシリーズで打ち負かされ、青色の球団は黄色よりもエネルギーの低い赤色にも勝って日本シリーズに進出ということになりました。このように自説が証明されたのですが、悔しいったらありません。

気を取り直して、今回は研究の話をしましょう。我々の研究室では、敏感肌など肌が弱い人や高年齢の人でも安心安全に使用できる化粧品を目指して、化粧品用の原料開発研究に取り組んでいます。

化粧品が今のような形で一般に広まったのは第一次世界大戦の頃だといわれています。このころに石油化学工業が発展し、例えば口紅に使う赤色の着色剤は高価なベニバナ色素から合成色素へと置き換えが可能になったことで、化粧品の低価格や大量生産が可能になりました。それ以前は、化粧品原料として植物や動物由来の油脂、鉱物由来の粉体などが主に用いられていたのですが、以降はその多くが石油由来の化学品へと置き換わっていきました。爆発的に化粧品製造メーカーが増えた時期には、副生成物や粗悪な原料による化粧品の肌トラブルが発生したこともありましたが、現在ではそのようなことはまずありえない程、化粧品の安全性向上の技術は進んでいます。

ところで、肌が弱い人の化粧品に対する安全・安心感を高め、かつ持続可能社会のためにできるだけ再生可能原料を使っていこうという考えから、加工食品と似たように、化粧品の原料も化学品から再び植物由来へ戻ろうという動きがあります。ただ、大昔のような植物から取り出したものをそのまま使うということでは、現在の化粧品の性能を満足できません。例えば、現在の化粧品はドラッグストアの店頭で日に浴びながら数年間置かれても品質は大丈夫だという高い安定性が求められています。ここが要冷蔵や賞味期限1ヶ月などの指定が可能な食品とは違うところです。

我々の研究室では、最近開発された技術であるナノテクノロジーや複合化技術を天然素材に適用することで、性能的に満足できる、あるいはさらなる付加価値をもつような植物由来の原料の開発に取り組んでいます。今までに開発された、あるいは現在開発中の原料を列挙しますと、海苔から取りだした蛍光発色着色剤。食用果実の皮を利用した乳液。植物油脂だけでできたリップクリーム。シークワーサーの果汁から作った紫外線防御剤。シワを隠す効果をもつ植物パウダーなどがあります。応用生物学部の学生は、これらの開発を卒業論文研究あるいは修士論文研究としておこなっています。

これら我々の開発した新しい原料を駆使することで、安全安心で高機能な化粧品がさらに発展していくものと期待しています。

おやおや「でも、それってお高いんでしょう?」という声が聞こえてきましたね。「いえいえご心配なく、今回は特別お買い得なお値段で・・・」と言いたいところですが、現状ではえらくお高いんです。そこの改善も研究課題のひとつです。

P3130010s

写真1 植物原料だけで作成したリップクリーム。唇にフィットする感触が良好だと好評です

P3130005s

写真2 試作した口紅スティックは学生が念入りに性能チェックをします

中国の油(あぶら):ユチャ油

2017/12/01 | 固定リンク 投稿者: 応用生物学部スタッフ

先日、当研究室のドクターコースの学生が故郷の中国から長い夏休みを終えて学校に戻ってきました。今回の帰国の目的は、彼の博士論文のためのサンプルの採取にありました。彼の博士論文のテーマは、「カメリア油(ユチャ油)の脂質特性」といって、中国では食用油や化粧品の原料として使用されるユチャ油の脂質としての特性を調べ、規格を作ることです。ユチャ油は、日本ではなじみがありませんが、ツバキやサザンカ、茶と同じツバキ科の植物であるユチャ(Camellia olefiera) の種子(写真)から採った油です。これらツバキ科の植物の種子から採取した油脂はツバキ油を含めカメリア油と呼ばれています。

カメリア油の中でもツバキ油は、ヤブツバキ(Camellia japonica)の種子から採取した油脂で、髪油などの化粧品やてんぷら油として日本では昔から使われてきました。現在でも、大島などの伊豆諸島や長崎・鹿児島県で生産されていますが、年間数十キロリットルと生産量が極めて少ないのが実状です。そのため、価格は10~20円/mLと一般の食用油(約0.2円/mL)に比べ非常に高く、高級品となっています。ツバキ油は構成脂肪酸としてオレイン酸と呼ばれる不飽和脂肪酸(炭素数が18で、二重結合を1個有する脂肪酸)を約80%含んでいるため、酸化されにくく髪油として利用されています。ユチャ油もまた、オレイン酸を70~80%含んでいて、ツバキ油と似た成分組成になっています。そのため、ツバキ油の代替品としてユチャ油が、中国から日本に年間約300トンが輸入されていて、主に化粧品の原料に利用されています。女学生の方々は、今度スキンケアやヘアーケア製品などの化粧品の成分表示をじっくり見てみてください。ユチャ油が化粧品の原料の一つとして使われていることに気づくことでしょう。

一方、ツバキ油やユチャ油をはじめとするカメリア油には問題があります。それは、菜種油や大豆油のような一般の食用油と違い、JAS規格のような製品の一定の品質を保証する規格がないことです。そのことが日本でユチャ油が食用油として販売されていない理由の一つとなっています。実際、中国においてもユチャ油の規格は存在しません。ユチャの種子から採取した油脂であれば、成分組成が異なっていても構わないことになります。

そこで当研究室では、ユチャ油の規格を作成するため、中国で生産・販売されているユチャ油の成分や健康機能を調べています。

このように、私どもの研究室を含め応用生物学部では、中国や韓国をはじめとするアジアやアラブ諸国の学生たちが留学していて、グローバルな研究を展開しています。

食品機能化学研究室 遠藤泰志

2

ユチャの種子

第1回 研究室同窓会!

2017/11/27 | 固定リンク 投稿者: 応用生物学部スタッフ

生命科学・環境コースの吉田です。先日、第1回目吉田研究室同窓会を開催致しました!卒業以来会っていなかったOB、OGに会うことができ、大変楽しい時間を過ごすことができました。大学の研究室は本当に居心地の良い場所です。同じ研究室出身であれば、同時期に研究室に所属していなくてもすぐに打ち解けることが出来ます。同窓会は卒業生と現役生、卒業生同士をつなぐいい機会になります。

当日は卒業生から現役生に対して「社会で求められる能力とは何か?」という話もして頂きました。専門知識、主体性、プレゼンテーション能力、コミュニケーション能力と仰っていた気がします(他にもあったかもしれませんが・・・)。職種によって求められる能力は変わると思いますが、やりたいことをやるために上司やクライアントを説得し(プレゼンテーション能力・コミュニケーション能力)、専門知識を持って主体的に仕事が出来れば、楽しく働くことができそうですよね。

これらの能力は大学の講義や研究室での研究活動で鍛えられる能力です。現役生やこれから大学に入学される方は、卒業後どのように働きたいのかを考えながら大学生活を過ごすといいかと思います。

171104_obog2

辛さを測る

2017/09/08 | 固定リンク 投稿者: 応用生物学部スタッフ

みなさん、こんにちは。応用生物学部の横山です。

このブログの読者のみなさんならご存知かと思いますが、応用生物学部には、生命科学・環境、医薬品、先端食品、先端化粧品の4つのコースがあります。現3、4年生については、バイオテクノロジー、環境、先端食品、先端化粧品の旧コースで分けられています。私は旧バイオテクノロジーコースの教員なので、研究室に配属している学生は、バイオテクノロジーコースかと思いきや、環境、食品、化粧品と全てのコースの学生がたくさんいます。そのため、研究テーマはできるだけ各自のコースに合わせたものをと考えています。ということで、食品や化粧品の分析などを研究テーマとして取り上げるようになりました。

先端食品コースの学生向けのテーマとして、辛味成分の分析、辛味センサーの開発を行っています。具体的には、唐辛子の辛味成分であるカプサイシンを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(図2)や電気化学センサーチップで分析する研究です。

Photo_4 

 図1 辛味成分カプサイシンを含む市販の香辛料

 

クロマトグラフィーとは、物質の大きさ・電荷・疎水性などの違いを利用して、混合物を成分ごとに分離する方法です。分離した後に、紫外線(UV)の吸収を測定するUV検出器や、電気分解してその電流を測定する電気化学検出器などで測定対象物質を検出します。図3はHPLCで市販の一味唐辛子の抽出液を分析した結果です。唐辛子成分が分離、検出できていることがわかります。ただ、HPLCは少々大掛かりな装置なので、簡単に測れるセンサーの開発を行っています。小型なセンサーなら、いつでもどこでも辛さを測ることができますよね。一方、化粧品コースの学生は、美白化粧品成分(メラニン合成酵素阻害剤)などの分析に取り組んでいます。

Hplc_3

  図2 当研究室で使用している高速液体クロマトグラフィー(HPLC)装置

 

Photo_5

  図3 HPLCで市販の一味唐辛子を分析した結果

 

 以上、ちょっと話が長くなってしまいましたが、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。 

東京工科大学 応用生物学部

横山憲二

より以前の記事一覧

  • コンピュータで生物学 2017.05.29
  • 温泉合宿で卒業論文審査会にそなえる 2017.03.10
  • 疾患ゲノム制御研究室(宇井研)の紹介 2017.03.03
  • 研究の紹介(生物創薬研究室 中村真男) 2017.02.24
  • 研究の紹介(水環境工学研究室 筒井裕文) 2017.02.17
  • 応用生物学部での医薬品コースのお話し 2016.05.20
  • 免疫食品機能学研究室(今井研 先端食品コース)紹介 2016.02.29
  • 横山研究室(生命科学・環境コース) 2016.02.18
  • バイオプロセス工学研究室の紹介 2015.11.16
  • 東京工科大学の先輩からのメッセージ(2015年その4) 2015.08.31
  • 東京工科大学の先輩からのメッセージ(2015年その3) 2015.05.20
  • 東京工科大学の先輩からのメッセージ(2015年その2) 2015.05.19
  • 東京工科大学の先輩からのメッセージ(2015年その1) 2015.05.18
  • 皮膚生化学研究室発足 2014.10.31
  • 生物電気工学(軽部・吉田)研究室の研究紹介 2014.10.27
  • 細胞制御研究室の新設 2014.09.30
  • 東京工科大学の先輩からのメッセージ(2014年その3) 2014.03.28
  • 東京工科大学の先輩からのメッセージ(2014年その2) 2014.03.25
  • 東京工科大学の先輩からのメッセージ(2014年その1) 2014.03.18
  • ムービーライブラリーが追加されました(2013年10月22日) 2013.10.23
  • ムービーライブラリー(ラボラトリーレポート)の公開 2013.10.08
  • バイオテクノロジーコースの研究室紹介(2013年度) 2013.06.22
  • 先端食品コースの研究室紹介(2013年度) 2013.06.21
  • 環境生物コースの研究室紹介(2013年度) 2013.06.20
  • 先端化粧品コースの研究室紹介(2013年度) 2013.06.19
  • 東京工科大学の先輩からのメッセージ(2013年その6) 2013.03.29
  • 東京工科大学の先輩からのメッセージ(2013年その5) 2013.03.18
  • 東京工科大学の先輩からのメッセージ(2013年その4) 2013.03.08
  • 東京工科大学の先輩からのメッセージ(2013年その3) 2013.03.05
  • 東京工科大学の先輩からのメッセージ(2013年その2) 2013.02.28
  • 東京工科大学の先輩からのメッセージ(2013年その1) 2013.02.18
  • 研究紹介の更新(食品フレーバー科学研究室) 2012.09.26
  • 活躍する先輩の紹介4 2012.04.25
  • 活躍する先輩の紹介3 2012.04.18
  • 活躍する先輩の紹介2 2012.04.16
  • 活躍する先輩の紹介1 2012.04.13
  • 先端化粧品コースに新しい研究室が誕生! 2011.06.13
  • 研究室紹介5(先端食品コース)2012.09.26修正 2011.03.05
  • 研究室紹介4(バイオテクノロジーコースその2) 2011.03.04
  • 研究室紹介3(環境生物コース) 2011.03.03
  • 研究室紹介2(先端化粧品コース) 2011.03.02
  • 研究室紹介1(バイオテクノロジーコースその1) 2011.03.01

その他のカテゴリー

オープンキャンパス ニュース 入試 出張講義(模擬授業) 学生実験 実験講座 工科大学の行事 日記・コラム・つぶやき 研究トピックス 研究室の紹介

CALENDARカレンダー
2023年3月
日 月 火 水 木 金 土
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  

カテゴリーCATEGORYカテゴリー

  • オープンキャンパス
  • ニュース
  • 入試
  • 出張講義(模擬授業)
  • 学生実験
  • 実験講座
  • 工科大学の行事
  • 日記・コラム・つぶやき
  • 研究トピックス
  • 研究室の紹介

RECENT ENTRIES最近の投稿

  • 春のオープンキャンパスのお知らせ
  • ケトン体が新型コロナから人類を救うかもしれない
  • 12月4日に来場型でプレ入試解答解説講座(来場型)を開催
  • 11月入試説明会+受験対策講座(来場型)&バーチャルオープンキャンパスのご案内
  • 8月21日にオープンキャンパス情報
  • 8月7日にオープンキャンパスが開催されます
  • 7月17日にオープンキャンパスが実施されます
  • 2022年度オープンキャンパスのお知らせ
  • ネアンデルタール人とホモサピエンス
  • つぶやき、始めてみました。
 
(C)Tokyo University of Technology All rights reserved.