▲ ページトップへ

研究トピックス

植物だって日々考えています!~紅葉に見る植物の栄養リサイクル~

さて今回は、日本の四季の代表的な風物詩である『紅葉(黄葉)』から、植物の巧妙な生存戦略と栄養リサイクル機構に関して、少し先端的な研究を交えて、解りやすくご紹介出来たらと思います。

 皆さんは、秋の落葉を見るとどのように感じるでしょうか?

『夏場元気に緑色だった葉が、寒くなってきたので元気なく黄色になり、そして落葉している』と何となく思う人もいるかも知れません。でも、この『黄葉と落葉』には、植物が厳しい自然環境に如何にして適応してきたかの知恵がたくさん詰まっています。

Img_3478a_3

工科大の秋

落葉樹は春に冬芽が発芽して葉を展開し、夏の間に盛んに光合成をして、自らを生長させ、種子を作るための養分を貯蔵します。秋になり日照が短く気温が下がってきたとき、落葉樹が緑の葉をつけたままだとしたらどうなるでしょう?葉の葉緑体での光合成能力が落ちて植物体全体のエネルギーを維持できなくなります。そこで生育に不利な時期には、一度落葉して、幹側に栄養を蓄積させ、翌年の春を待つのです。

つまり、植物は日長や温度等の外部環境を正確に把握して、自ら積極的に紅葉(黄葉)と落葉を引き起こしていることになります。

 葉の葉緑体には、光合成を効率的に行うための複数の色素が含まれており、大部分を占める葉の緑色はクロロフィルに由来し、黄色はカロテノイドに由来します。紅葉の時期に、葉が黄色くなるのは、色素の大部分を占めるクロロフィルが分解され、アミノ酸にまで分解され、隠れていたカロテノイドの黄色が現れることによるためです。このクロロフィル分解により、葉から大量のアミノ酸が幹側に移動・蓄積し、新芽の新しいエネルギーになるわけです。

 最近の私達の研究から、皆さんが毎日食べているイネにおいて、『オートファジー(自食作用)』と呼ばれる分解システムが、葉緑体の分解を担っており、植物体内のアミノ酸や窒素に代表される栄養のリサイクルに貢献していることが明らかになりました。

http://www.teu.ac.jp/press/2015.html?id=82

 緑色や赤色の蛍光を発するタンパク質(GFPRFP)を利用したライブセルイメージング技術をイネに適用し、イネの生きた葉や根でオートファジーを可視化することに成功しました。さらに、葉緑体がGFPで光るイネを作出し、葉緑体分解の可視化にも成功しました。このような研究は、植物の栄養リサイクル機構の解明に役立つだけでなく、「効率的に栄養を利用できる植物を作る」といった応用研究への発展も考えられます。

 オートファジーは、植物に限らず、ヒトを含む動物や酵母といった「真核生物」に分類される生物が広く持っている機能で、細胞の一部を小胞で隔離し、その内部を分解するシステムです。現在、オートファジーは創薬を含めた多くの研究者が注目する生命現象の一つとなっています。

 もしかしたら樹木の黄葉や落葉にも、この『オートファジーによる葉緑体分解』が重要な役割を果たしているのかも知れませんし、研究の興味は尽きません!

 是非皆さんも、身近な植物や樹木をちょっと立ち止まって、見てみて下さい。

日常に溶け込み過ぎて気にも留めない現象にも、実は不思議や興味がたくさん隠れているかも知れませんので…

 

来須


研究の紹介(阿部周司先生)

みなさん、こんにちは。応用生物学部の阿部です。

もうすぐ、東京工科大学に着任して1年になります。今年は本当に、教授の梶原先生をはじめとした多くの先生方、また、個性的な研究室のメンバーに支えられ、色々な事を経験できた良い1年になりました。3月に研究室を巣立っていく学生には、研究室で学んだこと(実験手法だけでなく、物事に対する取り組み方やここ一番という時にどれだけ踏ん張れるかということも含めて)を活かして、社会で活躍してほしいと祈っております。

 

さて、ここからは、私が取り組んでいる研究テーマについてお話しさせて頂きたいと思います。

現在、私は「食品原料の加工特性」に関して、「冷凍すり身」と「再凍結」という2つのキーワードを軸に研究を行っています。これだけ、聞いただけでは、どんなことをやっているのかすぐにピンと来ないと思いますので、説明いたします。

 

続きを読む "研究の紹介(阿部周司先生)" »

個性のある皮膚の細胞

 皮膚は人間の体の最も外側にある器官です。そして、体の組織の中では少し変わった構造を持っています。皮膚は体の外側から表皮と真皮に分けられます。表皮は表皮細胞と云われる細胞で構成されています。表皮細胞の中でも一番下に存在する細胞層だけが細胞分裂をすることができます。分裂した表皮細胞は、細胞の性質を変化させながら、体の外側に向かって上がっていきます。そして、体の最も外側にある角層となり最後は垢となって剥がれ落ちていきます。角層になると表皮細胞は生命活動を停止し、死んでしまいます。つまり、表現はあまり良くありませんが、私達は表皮細胞の死骸に体全体を覆われていることになります。しかし、この死骸はと単なる死骸ではなくしっかりとした機能を持っている死骸です。表皮細胞が死に行くプロセスは、分化とか角化と呼ばれて非常に大切なプロセスです。このプロセスが正しく行われないと皮膚が乾燥したり、外からの刺激に対して敏感になったりします。アトピー性皮膚炎もこのプロセスが正しく行われないことが一つの原因とかんがえられています。さて、この表皮細胞の死骸は角層細胞と呼ばれますが、角層細胞はセロハンテープを使って簡単に採取することができます。皮膚にセロハンテープを貼り付けてはがすと、接着面が白く濁ります。これは、角層細胞がセロハンテープに接着して白く見えています。この角層細胞を顕微鏡で観察すると敷石Masaki2015_2のようにきれいに一枚の層で剥がれている部分とそのすぐ横に何層も積み重なって剥がれている部分が混在しています。皮膚にはこの角層細胞を剥がして垢として排出する機能が備わっていますが、どうも表皮細胞には個性があるようで、同じ人の同じ部位の皮膚をみても剥がれかたに違いがあります。何層も積み重なって剥がれている状態は皮膚の状態が悪いとか乾燥しているときによく見られます。しかし、なぜ、このような表皮細胞に個性が出るのでしょうか。理由ははっきりとはわかりません。すべての表皮細胞の状態がシンクロナイズしていることが理想的な状態であるなら、なぜ、同じ人の同じ部位の皮膚で個性が出るのか非常に興味があります。解明したいと思いませんか。

正木 仁

2014年度のバイオニクス専攻修士課程の優秀研究

バイオ・情報メディア研究科バイオニクス専攻の修士課程の優秀研究が決まりました。今日の優秀研究審査会において、以下の2件の修士研究が選ばれました。おめでとうございます。 1位の藤本さんは、バイオニクス専攻の代表として卒業式で修了証書を受け取ります。また、優秀者は卒業記念パーティーで専攻長から賞状と記念品が授与されます。

1位:藤本和宏さん「ペプチドアプタマーを用いたステント材生体機能化表面の構築」

2位:永瀬 翠さん「病態における酸化ストレスの評価:ALSあるいは心肺停止患者に対するエダラボンあるいは低体温療法の効果」

2014年度の応用生物学部優秀卒業研究が決定しました

応用生物学部では、毎年、卒業研究の中から特に優秀な研究を行なった学生を表彰しています。今年度は、各コースごとの審査会で選ばれた8名がさらに優秀研究審査会で発表して、全教員の投票により3件の優秀研究が選ばれました。おめでとうございます。この3名については、卒業式の後の懇親会で学部長から賞状と記念品が授与されます。

 1位:吉岡仁美(軽部・吉田研究室)次世代シークエンサーを用いたグアニン四重鎖形成配列のゲノムワイドな同定法とメチル化DNA検出法の開発

2位:柳澤結花(杉山研究室)ヒト結腸ガン細胞株HCT116における分裂抑制評価系を用いた新規shRNAの探索

3位:山崎 隼(前田・中川研究室)毛髪損傷メカニズムの解明と毛髪保護成分の開発

日本ラクトフェリン学会、第6回学術集会で学会賞を受賞いたしました

応用生物学部・生物創薬研究室の佐藤 淳です。11/8(土)につくば国際会議場で日本ラクトフェリン学会、第6回学術集会が開催されました (http://lactoferrin.jp/2014/gaiyo.html)

Sato2014a_2

  私の研究室からは5件の発表を行いました(枯れ木も山のにぎわい?)。発表者達は私を含めて前日にアルコールを供給して士気を高め?、発表に臨みました。

 

5件の発表タイトル、および発表者は以下の通りです。

 

1)発表者:大学院M1野北 武秀、タイトル:ヒトラクトフェリン/ヒト顆粒球コロニー刺激因子融合蛋白質のヒト小腸上皮様細胞Caco2への取り込みと放出(口頭発表)

 

2)発表者:大学院M1片岡 尚希、タイトル:マウス前駆脂肪細胞株(3T3-L1)に対するウシ・ヒトラクトフェリンの脂肪蓄積阻害作用(口頭発表)

 

3)発表者:大学院M1村田 大輔、タイトル:IgG Fc融合技術を応用したヒトラクトフェリンの医薬品展開(ポスター発表)

 

Sato2014b

 

4)発表者:実験講師、大島 裕太先生、タイトル:小腸上皮細胞に発現するラクトフェリン受容体(LFR)の機能解析(ポスター発表)

Sato2014c


5)発表者:教授、佐藤 淳、タイトル:医薬品展開を目指した修飾ラクトフェリンの開発(シンポジウム口頭発表)

 

Sato2014d_4

 

学会前は準備が大変で、発表者全員ちょっとお疲れモードでしたが、いざ本番になるとエンジン全開!!特に村田氏の発表は学会賞を受賞し、本当にうれしい一日となりました。

 

Sato2014e

 

 

 改めて学会賞受賞の発表タイトル、および発表者を記します。なお本研究は国立医薬品食品衛生研究所の多田 稔先生と石井 明子先生、および鳥取大学農学部の竹内 崇先生との共同研究による成果です。

 

タイトル:IgG Fc融合技術を応用したヒトラクトフェリンの医薬品展開

発表者:村田 大輔1)、志賀 有貴1)、大島 裕太1)、小島 由載1)、杉本 晃規1)

多田 稔2)、石井 明子2)、竹内 崇3)、佐藤 淳1)

 

1)東京工科大学大学院バイオ・情報メディア研究科、2)国立医薬品食品衛生研究所 3)鳥取大学農学部獣臨床検査学分野

 

 現在本研究の成果に基づいて、()NRLファーマと共同で、ヒトラクトフェリンFc融合タンパク質を医薬品として開発しております。共同開発に参加いただける製薬企業を探しています。ご興味ある製薬企業の方は佐藤 淳 (atsato@stf.teu.ac.jp) までご連絡ください。 

今後、応用生物学部には医薬品コースを設立する予定です。創薬や医薬品開発全般に興味のある高校生は是非チェックください。生物創薬研究室では大学発の医薬品開発を目指して、企業と共同で日夜研究に励んでいます。来れ希望にあふれた高校生たち!!

                                

                                                 以上

大学院生の国際学会デビュー

  106日から11日にかけてイタリア、ローマで開催された国際ラクトフェリン学会に、大学院M2の志賀有貴さんと一緒に参加してきました。我々の研究室ではミルクに含まれる多機能性タンパク質であるラクトフェリンに着目して、その医薬品化を企業と共同で研究しています。今回の学会では、体内での安定性向上に成功したラクトフェリンIgG Fc融合タンパク質の発表を行い、国内外のラクトフェリン研究者と議論するのが目的です。志賀さんは、国際学会での発表はもちろんのこと、海外渡航は初めてという事で、少し緊張していたようですが・・・・今回の学会参加では英語の重要さを再認識したようです。今後は、この経験をこれから進学する大学院博士課程で活かしてくれる事でしょう。

Shiga

国際ラクトフェリン学会は2年に一度開催されます。再来年は名古屋での開催が決まりました。次回は一人でも多くの研究室メンバーが発表できるよう期待しています。        生物創薬研究室  佐藤 淳

Sato2013

Are we alone in the universe?

We are not alone

1977年公開の映画「未知との遭遇」は、スティーブン・スピルバーグ監督の手による作品です。地球外知的生命体(つまりは宇宙人)との出会いがこの映画のテーマであり、予告編で語られたキャッチフレーズが、" We are not alone"「我々人類はこの宇宙の中で唯一の存在ではない」でした。20年前くらいを境に、我が国ではUFOや宇宙人といった話題が全く聞かれなくなりました。しかし、「地球以外に生命はいるのだろうか」という問いかけは、実は生物学上のみならず、自然科学上の最もインパクトが大きいテーマであることに変わりはありません。このテーマに果敢に挑もうとする二つの研究テーマについてご紹介します。

たんぽぽ計画 タンポポは、種を綿毛につけて風に乗って飛ばします。種が落ちた場所が、発芽に適した場所(水が十分ある・温度が適当)であれば、やがてその場所にタンポポが根付き、黄色い花を咲かせるでしょう。タンポポの種と同様に、生命の種が宇宙空間を漂っているのではないか、という考えがあります。この考え方はパンスペルミア説と呼ばれ、古くかられっきとした大化学者が唱えてきた説です。具体的には、宇宙空間を漂う宇宙塵や彗星に微生物が付着しており、はるか昔にそれが地球に到達して、地球に住む生物の源になったのではないか、という考え方です。この考え方が正しければ、今でも宇宙空間に生物が漂っている可能性があります。すでに航空機を使って成層圏(高度10 km)近くの空間からデイノコッカスと呼ばれるバクテリアが採集されています(図1)。筆者の研究グループは、エアロゲルと呼ばれるアモルファスガラスを国際宇宙ステーション(ISS)の実験モジュール「きぼう」に搭載し、一年間宇宙空間に暴露して、宇宙空間を飛来している宇宙塵やスペースデブリを捕獲する研究計画を進めています。エアロゲルに捕獲された微粒子を地球に持ち帰り、厳重な管理のもと、生命の痕跡(DNA断片など)を分析する予定です。すでに宇宙航空研究開発機構(JAXA)の正式プロジェクトとして認められ、近い将来の打ち上げが計画されています。


Sasaki2013

1 液体培地中で増殖したデイノコッカス。赤い色をしており、乾燥にも強い。

MELOS計画 望遠鏡が発明されて以来、地球の隣の惑星である火星には、生物がいるのではと考えられてきました。皆さんも映画やSF小説でご承知の通り、タコ型宇宙人が想像されてきました。科学的には、1970年代以降アメリカの探査機による火星生命探査が行われてきました。バイキング、ソジャーナー、オポチュニティ、キュリオシティと呼ばれる探査機によって、以降40年間断続的に生命の痕跡を探す計画が進められました。今のところ、NASAは火星で生命を発見したという証拠を得ていません。あくまでも「生命の証拠」を探しているがゆえに、決定的な証拠が得られていないと思われます。一方、筆者の所属する研究グループでは、火星に生命探査顕微鏡を送りこんで、直接火星土壌中の微生物を探す計画(Mars Exploration with Lander-Orbiter Synergy計画)を進めています。火星という、地球とは全く異なる温度・気圧環境で、細胞内のDNAやタンパク質を直接観察するための様々な技術が開発されています。

宇宙開発は天文学や物理学、機械工学の独壇場と思われがちですが、いまや生物学者がどんどん参加できる時代となりました。それどころか、生命探査には「生物とは何か」をきちんと定義できる生物学者の協力が不可欠です。また、宇宙という極めて過酷な環境で、宇宙飛行士が長期間活動するためには、医者にかかれない状態で健康管理が必要です。いわば究極の予防医学が必要となるのが宇宙という舞台です。私の研究室では、宇宙生命探査と、宇宙における臨床検査を二つの柱として、JAXAUC Berkeleyと共同で研究を進めています。その成果は、そのまま地球上における環境・医療科学に役立ちます。宇宙という広い観点から生命の不思議を探りたいみなさん、是非一緒に宇宙を目指しましょう。

応用生物学部 佐々木聰

都市河川の薬剤耐性菌

応用生物学部の浦瀬太郎教授と大学院生らは、抗生物質や合成抗菌剤が効かない「薬剤耐性細菌」が、都市河川においても多く存在することを、多摩川での現地調査などから明らかにしました。

秋川や高尾山、小河内ダム放流水などの上流には、基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生菌と呼ばれるタイプの薬剤耐性菌はほとんど存在しませんでしたが、都市部を流れる区間では多く存在していました。

水環境中の薬剤耐性菌の由来について確かなことは言えません。また、薬剤耐性遺伝子が病原細菌に移って、治療の困難な感染症に発展する可能性があるのかについても、明らかではありません。しかし、切り札的な抗生物質については、使用用途を限定するなど、薬剤耐性菌の発生を抑制し、人類が発見した宝物とも言える抗生物質の有効性を温存することに社会がもっと取り組む必要があることを、本研究は提起しています。

この成果は、201311月に開催される土木学会「環境工学研究フォーラム」において発表予定です。また、読売新聞など多数のメディアで報道されました。

プレスリリース

http://www.teu.ac.jp/press/2013.html?id=274

3次元プリンター

最近、テレビや新聞で、3次元プリンターの話題をよく見かけるようになりました。

 3次元プリンターは、その場で立体的な物を作ってしまう装置で、 今はアメリカで盛んに利用が進んでいますが、元をたどると日本の児玉さんという方が発明した技術です。

 当研究室では、10年ほど前から、マイクロ版の3次元プリンター(マイクロ光造形装置)を製作して、マイクロマシンを作り、バイオ分子の観察や操作を行う研究をしています。マイクロ版の場合は、フェムト秒レーザーという特別なレーザーを使い、2光子吸収という現象を利用して、5ミクロンから100ミクロンくらいの立体的な造形物を作ること ができます。

 今年は、土屋君と小倉君の2名が、この装置を使って研究をすることになり、まず、練習として、片柳研究所の建物を作ってみることにしました。写真が製作したものの電子顕微鏡写真です。横幅が10ミクロン程ですから、実物の1/10000000の模型ということになります。今回は、まだ始めたばかりで、あまり出来ばえがよくありませんが、実際の研究では、もっと精度の高いものが作れるようになるでしょう。            村松

Kataken1_2

Kataken2