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有効数字とAI

溶液の密度の計算をしましょう。

「3.55 (g) / 5.00 (mL)」はいくつでしょうか。「0.71 (g/mL)」と答えた、そこのあなた! ひょっとして電卓(スマホ?)で計算しましたか。有効数字を考慮すると、正解は「0.710 (g/mL)」となります。

有効数字とは、測定値や計算値として意味をもつ桁だけを表示したもののことで、数値の精度と密接に関係しています。上記の計算の場合は、3桁÷3桁なので、結果も3桁で表すのが科学のルールです。しかし上記の数字だとちょうど割り切れてしまい、計算機上は「0.71」と2桁で表示されてしまいます。せっかく3桁の精度があるのに、2桁で表示すると精度の観点からは損することになります。「0.710」と「0.71」は科学的には雲泥の差です。計算機がはじき出した数字をむやみに信用してはいけないのです。最後は人が判断しないといけません。

実は同じような計算を、現在1年生の必修実験「化学基礎実験」で行っています。計算機で表示される数値(桁)をそのまま信じて答えとして書く学生さんがわりといますので、上記のような解説をしています。

翻って、世の中はなんだかAIブームです。コンピュータが膨大な情報をもとに学習して、人に最適な環境や情報を提供してくれるようで、10年後の私たちの暮らしは大きく快適に変わりそうです。

そこでふと頭の中でリンクしたのが、計算機がはじき出す「有効数字」です。コンピュータが提供する情報は、本当に確かなのでしょうか。「間違っているわけがない」と鵜呑みにしていいのでしょうか。AIは膨大な数の可能性を瞬時に考慮して最適解を提示してくれるので、人間が下手に考えるよりはよっぽど頼れるのかもしれません。しかしその最終判断は人間が下すことが大事ではないでしょうか。もちろんこれをいちいち行うことは現実離れしていますが、少なくとも、ごくたまにでも人間の頭で「それでいいのかな」と吟味してみることが、人間(の尊厳?)として必要ではないでしょうか。

急いで結論を出さず、「ちょっと待てよ」と立ち止まって考えてみる習慣は、いつどんな世の中になっても大事にしたいと思います。

応用生物学部 矢野 和義

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