植物由来の化粧品作りに挑戦中
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応用生物学部化粧品材料化学研究室の柴田です。
さて、前回の復習からです。昨年のブログ「黄色は最強であるという話(2017/06/28)」にて、プロ野球球団のチームカラーと光の波長エネルギーとの関係を考察し、当時セ・リーグの上位3チームであった、赤、オレンジ、黄の中では黄色の我が球団がエネルギー的に優位であるという学説を提示しました。
そして結果は・・・。愛すべき黄色の球団は、よりエネルギーの高い青色球団に泥んこクライマックスシリーズで打ち負かされ、青色の球団は黄色よりもエネルギーの低い赤色にも勝って日本シリーズに進出ということになりました。このように自説が証明されたのですが、悔しいったらありません。
気を取り直して、今回は研究の話をしましょう。我々の研究室では、敏感肌など肌が弱い人や高年齢の人でも安心安全に使用できる化粧品を目指して、化粧品用の原料開発研究に取り組んでいます。
化粧品が今のような形で一般に広まったのは第一次世界大戦の頃だといわれています。このころに石油化学工業が発展し、例えば口紅に使う赤色の着色剤は高価なベニバナ色素から合成色素へと置き換えが可能になったことで、化粧品の低価格や大量生産が可能になりました。それ以前は、化粧品原料として植物や動物由来の油脂、鉱物由来の粉体などが主に用いられていたのですが、以降はその多くが石油由来の化学品へと置き換わっていきました。爆発的に化粧品製造メーカーが増えた時期には、副生成物や粗悪な原料による化粧品の肌トラブルが発生したこともありましたが、現在ではそのようなことはまずありえない程、化粧品の安全性向上の技術は進んでいます。
ところで、肌が弱い人の化粧品に対する安全・安心感を高め、かつ持続可能社会のためにできるだけ再生可能原料を使っていこうという考えから、加工食品と似たように、化粧品の原料も化学品から再び植物由来へ戻ろうという動きがあります。ただ、大昔のような植物から取り出したものをそのまま使うということでは、現在の化粧品の性能を満足できません。例えば、現在の化粧品はドラッグストアの店頭で日に浴びながら数年間置かれても品質は大丈夫だという高い安定性が求められています。ここが要冷蔵や賞味期限1ヶ月などの指定が可能な食品とは違うところです。
我々の研究室では、最近開発された技術であるナノテクノロジーや複合化技術を天然素材に適用することで、性能的に満足できる、あるいはさらなる付加価値をもつような植物由来の原料の開発に取り組んでいます。今までに開発された、あるいは現在開発中の原料を列挙しますと、海苔から取りだした蛍光発色着色剤。食用果実の皮を利用した乳液。植物油脂だけでできたリップクリーム。シークワーサーの果汁から作った紫外線防御剤。シワを隠す効果をもつ植物パウダーなどがあります。応用生物学部の学生は、これらの開発を卒業論文研究あるいは修士論文研究としておこなっています。
これら我々の開発した新しい原料を駆使することで、安全安心で高機能な化粧品がさらに発展していくものと期待しています。
おやおや「でも、それってお高いんでしょう?」という声が聞こえてきましたね。「いえいえご心配なく、今回は特別お買い得なお値段で・・・」と言いたいところですが、現状ではえらくお高いんです。そこの改善も研究課題のひとつです。