中国の油(あぶら):ユチャ油
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先日、当研究室のドクターコースの学生が故郷の中国から長い夏休みを終えて学校に戻ってきました。今回の帰国の目的は、彼の博士論文のためのサンプルの採取にありました。彼の博士論文のテーマは、「カメリア油(ユチャ油)の脂質特性」といって、中国では食用油や化粧品の原料として使用されるユチャ油の脂質としての特性を調べ、規格を作ることです。ユチャ油は、日本ではなじみがありませんが、ツバキやサザンカ、茶と同じツバキ科の植物であるユチャ(Camellia olefiera) の種子(写真)から採った油です。これらツバキ科の植物の種子から採取した油脂はツバキ油を含めカメリア油と呼ばれています。
カメリア油の中でもツバキ油は、ヤブツバキ(Camellia japonica)の種子から採取した油脂で、髪油などの化粧品やてんぷら油として日本では昔から使われてきました。現在でも、大島などの伊豆諸島や長崎・鹿児島県で生産されていますが、年間数十キロリットルと生産量が極めて少ないのが実状です。そのため、価格は10~20円/mLと一般の食用油(約0.2円/mL)に比べ非常に高く、高級品となっています。ツバキ油は構成脂肪酸としてオレイン酸と呼ばれる不飽和脂肪酸(炭素数が18で、二重結合を1個有する脂肪酸)を約80%含んでいるため、酸化されにくく髪油として利用されています。ユチャ油もまた、オレイン酸を70~80%含んでいて、ツバキ油と似た成分組成になっています。そのため、ツバキ油の代替品としてユチャ油が、中国から日本に年間約300トンが輸入されていて、主に化粧品の原料に利用されています。女学生の方々は、今度スキンケアやヘアーケア製品などの化粧品の成分表示をじっくり見てみてください。ユチャ油が化粧品の原料の一つとして使われていることに気づくことでしょう。
一方、ツバキ油やユチャ油をはじめとするカメリア油には問題があります。それは、菜種油や大豆油のような一般の食用油と違い、JAS規格のような製品の一定の品質を保証する規格がないことです。そのことが日本でユチャ油が食用油として販売されていない理由の一つとなっています。実際、中国においてもユチャ油の規格は存在しません。ユチャの種子から採取した油脂であれば、成分組成が異なっていても構わないことになります。
そこで当研究室では、ユチャ油の規格を作成するため、中国で生産・販売されているユチャ油の成分や健康機能を調べています。
このように、私どもの研究室を含め応用生物学部では、中国や韓国をはじめとするアジアやアラブ諸国の学生たちが留学していて、グローバルな研究を展開しています。