疾患ゲノム制御研究室(宇井研)の紹介
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こんにちは。2016年の10月より、新任教員として赴任しました宇井彩子です。応用生物学部の医薬品コースで疾患ゲノム制御研究室をスタートさせました。
私は、大学の4年生で配属された研究室で研究に少し興味を持ち、その後大学院に進み、「DNA損傷修復機構とゲノム不安定性とがん」の研究を始めてから、研究の面白さにすっかりはまってしまいました。大学院を卒業後は、様々な研究室の先生のもとで知識や技術を深く学びながら、この分野の研究を進めてきました。これまで多くの先生方や先輩・後輩、研究仲間のおかげで研究を進めてこれたことに大変感謝しております。
私の研究室での研究「DNA損傷とゲノム不安定性とがん」と書いても、一体何だろう?と思われるかもしれませんが、誰にでも起こっている大変身近な話の研究なんです。私達は普段の生活において、太陽の光(紫外線)を浴びたり、食事をしたり(同時に食べ物に含まれる物質、細菌が出す物質、化学物質を取り込んだり)する中で、あるいは、私達の細胞が増殖(DNAの複製や分裂、蛋白質を作り出す転写等)を繰り返す中で、日々、私達のDNAに傷が生じると考えられています。このようなDNAの傷ですが、人を含む生物にはDNAの傷を修復する機構(DNA損傷修復)が備わっているため、すぐに修復されます(下記の図1)。しかし、長い年月の間に修復しきれないDNA損傷が蓄積すると、DNAの変異やゲノムの異常などの「ゲノム不安定性」を引き起こし、「がん」や「老化」を引き起こすと考えられています(下記の図2)。このため、DNA損傷修復の研究は、細胞がん化や老化のメカニズムの解明に役立つと考えられています。一方で、放射線治療や一般的な抗がん剤の多くは、このDNA損傷を利用し、がん細胞のDNAを傷つけることで死滅させます。ですので、DNA損傷修復の研究は、新たながん治療の開発にも貢献すると考えられます。
去年の研究室発足以来、「内分泌ホルモンとがん」が専門の岡田麻衣子さんが研究室に加わってくれています。お互いの専門分野を生かし、新たな視点を研究に取り入れることにより、研究を通して「がんの克服」に貢献していきたいと考えています。また、研究室で配属された学生さんと岡田さんが接することもありますが、普段のコミュニケーションを介して、私以外の新たな視点を持つ研究者と話す機会があることは、学生さんにとっても良い刺激になり学ぶことも多いのではと考えています。
東京工科大学はとても広々としていて、気持ちいの良い場所だと思います。勉強や研究に疲れた時に学内を散歩すると、自然やお庭の美しさに目の疲れが取れて、心が癒されます。天気が良いと、片柳研究所から富士山も見えます。応用生物学部の先生方もとても気さくなのですが教育・研究熱心で、とても素晴らしい大学に来させてもらったと感謝しています。この東京工科大学で先生方や学生さんと共に、がん研究に貢献できたらと思っています。皆様、ぜひ一度、東京工科大学にお立ち寄りください。
(図の説明)
図1、私達の研究室では、DNA修復機構のメカニズムの解明を行っています(Ui et al. Molecular Cell, 2015)。
図2、がん抑制遺伝子の機能が欠損すると「ゲノム不安定性」になり、異常な染色体が生じます(Ui et al., Oncogene, 2014)。