研究の紹介(生物創薬研究室 中村真男)
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皆さん、こんにちは。医薬品コースの中村真男です。
今回は、初めてのブログですので、私の研究について紹介したいと思います。
私の研究テーマは、さまざまな疾患の発症機構を細胞表面にある”糖鎖”に着目して解明することです。
皆さんは”糖”というと砂糖や澱粉などの食品として、また本に使われる紙やバイオエタノールの原料としてのイメージが強いのではないでしょうか。また最近の健康ブームで、オリゴ糖(糖が数個つながっている糖鎖の一種)やコンドロイチンなどの”糖鎖”がサプリメントとして広く使用されているため、「なにか体によいことをする働きをもつ物質」と認識されている方もおられるかもしれません。
私たちの細胞表面には、びっしりと覆っている糖鎖と呼ばれる分子が存在しています。糖鎖は文字通り、糖が鎖のようにつながり合った一群で、そこにどんな細胞が存在しているかを周囲の細胞に伝える情報分子としての役割、例えば免疫細胞の活動を制御したり、精子と卵子の結合(受精)の際にも糖鎖は関係しています。また、インフルエンザウイルスや病原性の細菌も細胞表面にある糖鎖を目印として体内に侵入してきます。インフルエンザ治療薬のタミフルは、糖鎖とウイルスの関係に着目した研究が生み出した成果です。最近の研究から、がん化した細胞表面の糖鎖構造は、正常細胞のものと大きく異なることがわかってきており、がんの治療を目指した研究でも糖鎖は注目されています。
これまでに中枢神経組織の損傷部位にみられる神経軸索の再生に関わる新しい受容体の探索を行ってきました。研究当初の目標は、再生阻害の受容体を探すことでしたが、幸運にも再生の阻害と促進に関わる2種類の糖鎖受容体の発見に至りました。今後は、これまでに開発した神経再生の解析技術を、がん細胞(写真)の転移研究に応用しようと研究を始めています。
皆さんと一緒に医薬品開発の研究ができることを楽しみにしています。
生物創薬研究室 中村