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体質を遺伝子レベルで調べる

2016/06/17 | 固定リンク 投稿者: 応用生物学部スタッフ

医薬品コースの加藤です。先日、3年生の学生実験で、お酒に強い体質か弱い体質かを遺伝子レベルで調べる実験を行いました。下は当日の写真です。

Kato2016_1

実験内容を簡単に説明します。ヒトゲノムの塩基配列にはわずかな個人差があり、この個人差を遺伝子多型(高校生物の教科書では遺伝的多型と表記されている場合あり)といいます。遺伝子多型はいくつかの種類に分けられますが、ゲノム上に最も多く存在する遺伝子多型は、一塩基多型(SNP)という一塩基単位の個人差です。SNPを調べることで、個人の体質(将来的にある病気にかかる可能性など)を予測することができます。最近ではDeNAなどの企業がSNP解析で体質を調べるサービスを有料で行っています。

 

前置きが長くなりましたが、この学生実験ではアルコール代謝に関わるアルデヒド脱水素酵素2(ALDH2)の遺伝子のSNPを調べます。3年生はまず綿棒で自分の口の内側をこすって口腔細胞を採取し、そこから自分のゲノムDNAを抽出します。つぎに、アレル特異的PCR(PCRはポリメラーゼ連鎖反応のことで、増やしたい遺伝子断片だけを大量にコピーする技術。1993年ノーベル化学賞受賞)という実験方法で、SNPを調べます。アレル特異的PCRの後、下のような電気泳動で各自のALDH2遺伝子のSNPを調べます。

Kato2016_2

ALDH2遺伝子の487番目のコドンの一塩基目がGであればそのALDH2遺伝子は野生型、Aであれば変異型です。しかし、この実験ではあくまでも遺伝子型がわかるだけで、本当にお酒に強いかどうか(つまり表現型)と必ず一致するわけではありません。実験終了後の金曜日の夜には、それを確認するために(?)実験打ち上げ飲み会を開催する3年生もいるようです・・。

 

最先端の医療用医薬品の中には、病気に関連するタンパク質のはたらきをピンポイントに抑えるものが多くあります。そして、それらの医薬品がよく効く患者さんと、全く効かない患者さんが存在し、その違いが患者さんの遺伝子多型によるものだと分かってきました。今後の新薬開発には、患者さんの遺伝子多型の解析が不可欠になっていくでしょう。

加藤 輝

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