「コエンザイムQ10の基礎と応用」の出版
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編集した学術書「コエンザイムQ10の基礎と応用」を2015年5月31日に丸善から上梓した(230頁,3000円).各分野25人の専門家に分担執筆を依頼し,出来上がった日本初のコエンザイムQ10に関する専門書であり,待望の書であるとの高評価をいただいている.自分自身は発見と物理化学的性質,抗酸化作用,吸収・輸送,日本コエンザイムQ協会のあゆみの各章を担当した.
コエンザイムQ10の発見者は米国のFred Crane博士で,弱冠31歳の時の仕事である.1957年に発表された論文はわずか2頁であるが,ミトコンドリアでのATP産生に不可欠の成分であることを明らかにしていることが特筆される.脂肪酸のβ酸化で有名なボスのDavid Greenが著者に加わっていないことも興味深い.インドに長期出張していて発見に立ち会っていなかったのである.
基礎編では他にATP産生と生合成・欠損症が取り上げられている.一方,応用編では心臓病,認知症,皮膚疾患,口腔疾患,肝疾患,消化管疾患,腎・泌尿器疾患など臓器別の疾患や健康・スポーツ,栄養との関係が議論されている.コエンザイムQ10は日本で初めて工業化された素材であるので,その歴史が資料編にまとめられている.
日本学士院長であり国立がん研究センター名誉総長の杉村隆先生には序文を賜った.エイムステストで有名な恩師Bruce Ames教授に紹介していただいた1986年以来,何かとご指導をいただいている.お忙しい中,全てのゲラを読んでいただいた上での簡潔かつ的確なコメントには感服している.そして小生のことを科学者としては長年の友人とお考えいただいている.何よりもうれしく,身が引きしまる.
(山本順寛)
コエンザイムQ10の基礎と応用
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