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共同研究の醍醐味

 201084日の一本の電話からすべては始まりました.「東大医学部神経内科の辻省次です.はじめまして.コエンザイムQ10の測定に関してお話を伺いたいのですが,研究室をお訪ねしてもよろしいですか?」「了解しました.ご都合の良い日を23お知らせ下さい」「それでは,メールでご連絡します」丁寧な口調に,勝手に大学院生ではないかと思ったが,ネットで調べてみると辻先生は高名な臨床教授でびっくりした.すぐにメールが来て,早速,86日にお目にかかることになった.

 これまでの研究経過と研究課題をまとめた,A49ページの資料をいただき,説明を受けた.「多系統萎縮症という難病がありますが,原因もわからず,したがって治療法もなく困っています.ごくまれですが家族に多数の患者がいる場合があります.その遺伝子を解析すると,予想もしなかった,コエンザイムQ10を合成する酵素の一つであるCOQ2に変異が見つかりました.そこで,健常者と患者さんのコエンザイムQ10レベルを測っていただきたいのです」「承知しました」「血清とB細胞が用意できますが,どちらを分析するべきですか?」「大人の線維筋痛症では,細胞レベルでは低下しているが,血清レベルでは確認できなかったという報告がありますから,B細胞です」「200検体以上ありますが...」「大丈夫です.是非,我々が作った分析装置をご覧下さい」と,ご紹介しました.

 1018日には,担当の三井純先生とともに自ら検体を持ってこられ,共同研究が本格的にスタートしました.およそ1年の間に,8回にわたって検体を受け取り,分析をしました.予想通り,変異が2つのある患者さんは明らかにコエンザイムQ10レベルが減少していました.また,数は限られますが,脳組織でも同様でした.

 以上の結果に意を強くされた辻先生は,論文の作成に取りかかられ,New England Journal of Medicineという,最高権威の医学雑誌に報告されました(2013: 369, 233-244).NatureScienceよりも難しい雑誌に共著者として加えていただいたことは大きな名誉です.しかしそれよりも,これまでこれといった治療法のなかった難病に,コエンザイムQ10の投与が役立つかもしれないという希望がもたらされたことを喜んでいます.

山本順寛

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