足を骨折して
| 固定リンク 投稿者: 応用生物学部スタッフ
昨年暮れにスキーで左足を骨折してしまった。私も妻もスキーが好きで毎年、色々なスキー場に出かける。昨年暮れは、甥っ子を連れて、1泊2日で群馬県のつま恋スキー場へ出かけた。12月ということもあり、積雪は数十cmで滑走範囲も狭かった。それでもゴンドラが運行していたので、それを使って頂上から何度も滑走した。その最中、私は転倒したのだが、今までに経験したことにない痛みを左足に感じた。これまで30年間スキーをやってきたが、骨折したことは今までに一度もなかったが、骨折したと直感した。私は立てることができなくなったので、妻に頼み、レスキュー隊を呼んでもらった。スノーモービルで麓までおろしてもらい、直ちに救急車で、スキー場に比較的近いといっても、車で1時間半の距離にある長野県の小諸市にある病院に搬送された。そして直ちにレントゲンを撮られ、複雑骨折であることが判明し、そのまま入院することとなった。足が腫れていたため、それが治まるのを待って1週間後に手術することとなった。これまで手術を受けたことはあるが、外科手術は初めてであった。手術は、骨折した骨を固定するため、チタンの棒を入れて骨をボルトで止めることが行なわれた(写真1)。私が以前受けた手術は、内科の手術であったので、そのときは全身麻酔のため手術中は何も分からなかった。しかし、今回は下半身だけ麻酔をしたので、手術中の様子を感じることができた。4名の医者(麻酔科医1名を含む)と3名の看護師で手術が行われたが、手術中は、電気メスや機器の音が響き渡り、まさに家を建築している大工の作業(決して日曜大工DIYではない)の感じであり、いい仕事をしているなと感じ入ってしまった。約4時間で手術が終わったが、術後3日は痛みに悩まされ、鎮痛剤を入れてもらった。その後は、痛みは徐々に收まり、車椅子での生活となった。入院してから、3週間位でようやく松葉杖を使う練習を始めた。ともかく、早く歩けるようになりたいと思って練習をしたのだが、足を下げた状態だと、足が膨れ、すぐに痛みが生じるので、思うようには歩けなかった。今回、車椅子を使うのが初めてならば、松葉杖を使うのも初めてであった。入院してから4週間、松葉杖を使って移動できるようになったので、退院し、自宅で療養することとなった(写真2)。
退院後1ヶ月間自宅で療養した後、大学に復帰できるようになったが、これまで気づかなかったことが今回大怪我をして色々と分かった。その1つがバリアフリーである。松葉杖の生活では、階段の上り下りが極めて困難であることを痛感した。自宅の玄関前のわずかな階段ですら、一歩ずつ注意して歩かなければならなかった。現在、電車やバスを使って通勤しているが、バスを乗り降りするときの段差は非常に大きいと感じた。足腰の弱いお年寄りにとって、このバスの乗り降りは実に大変な作業であることを痛感した。また電車では、改札からホームへの移動が実に大変である。ホームは大抵、改札からエスカレーターやエレベーターを使用して行かなければならないのだが、多くの駅で、改札からエレベーターまでの距離が遠いのである。これは八王子駅でも同じであり、改札から一番離れた位置にエレベーターがある。またエレベーターに近い車両号車も駅によってまちまちである。JRや私鉄関係者には、是非、この点を改善してもらいたいと願うものである。とくに電車では、バスと同様に優先席が設けられているのだが、通勤・通学時間帯では、混雑のために優先席にたどり着けないことがしばしばある。この点についても優先車両などを設けるような配慮をしてもらいたい。
足を怪我してもう一つ気づいたものに買い物がある。健常な時は何の苦もなかった買い物が、松葉杖を使用している時は、歩くのが不自由なだけでなく、片手だけで買い物かごを持って買い物をすることが極めて難しいのである。また買った物を自宅なり運ばなければならないのだが、その量に限りがあり、多くの物を運ぶことができない。出かけるときはザックを使っているので、その中に入る量だけとなる。スーパーマーケットでは、是非宅配のサービスをしてもらうと助かる。同様に、外食をする場合、セルフサービスの飲食店、例えばハンバーガーショップや学食などでは自分でお盆を持たなければならないのだが、お盆に食べ物を置いたあと、テーブルに運ぶのが実に厄介である。片手でお盆を運ぶので、不安定であり、飲み物などは移動中にこぼしたりすることがある。両手が使えないのは実に不自由である。その点、ラーメン屋や牛丼屋はカウンターの前に座れば、食事を運んでくれるので、よく利用している。
最後に、骨折して半年が過ぎたが、骨の成長がかんばしくなく、6月に腰の骨を一部とって骨折した部分に移植する手術を行った。現在、早く骨が再生されることを期待しつつリハビリを続けている。入院中、他の患者さんとも話をしたが、昨今の再生医療の進歩は目覚しいものがある。とくにips細胞による骨の再生化も試みられているが、このような技術が1日も早くも実際の整形外科の分野でも一般化されれば、私のように、再手術の必要性もなく、かつ治療期間の短縮にもつながることと思う。日本は、ますます高齢化が進む中で、高齢者の骨折は寝たきりにつながることから、深刻な問題と思われる。高齢者ほど、骨の再生は難しいとされるので、高齢者の治療のためにも再生治療の進歩を期待したい。
(遠藤泰志)
病院からのおみやげ(骨を止めていたボルト)
松葉杖(2代目)