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発酵について

私の研究室では、お酒を作ることができます。ビール製造キットなどが市販されていますので、お酒は材料さえ揃えれば誰でも作れると思うかもしれませんが違います。実は、アルコール分が1%を超える飲み物を作るには免許が必要になります。

ビールと第3のビールの値段の差の半分は、税金額の差だと知ると、誰がどれだけビールや第3のビールを作ったかを管理すべき事に思い及びます。実際、ビール、発泡酒、第3のビール、ワイン、清酒、焼酎、ウイスキーなど、それぞれのお酒の種類ごとに製造免許が必要なのです。

これらのうち、東京工科大学では米を原料とする「清酒」と芋などを原料とする「その他の醸造酒」を醸すことができます。どちらも醸造酒ですので、残念ながら蒸留酒である焼酎を作ることはできません。

数十年以上も昔、清酒には品質よりも量を求められた時代がありました。その頃の、混ぜ物が入っていて不味いという風聞が根強く残り、消費量は減少の一途を辿って来ましたが、がんばれ東北キャンペーンで少し回復しました。それもそのはずで、続々と導入される新しい酵母など醸造業界の技術革新は著しく、世の中は高品質で香り高い特定名称酒の時代になっているのです。秋田を初めとする東北各県は勿論、全国の蔵に規模の大小を問わず、間違いなく美味しいお酒を作るためのノウハウが行き渡っています。その、伝統と新規技術に支えられた清酒醸造を学び、たとえば「軽めで切れの良い」味の酒を作るにはどうするのか、を工夫してもらうことが私たちの研究課題の一つです。

お酒以外の発酵と言えば、日本では味噌・醤油があげられますが、西洋ではヨーグルトその他の発酵乳になります。ヨーグルトやチーズの製造も歴史が古く、製造技術は確立されていると言えるのですが、それでも、使用する微生物を変えたり、特殊な加工をした原料を用いたりして、カスピ海ヨーグルト・ギリシャヨーグルトのような目新しいものがでることがあります。私のところでは、乳製品に対していろいろ工夫すると共に、豆乳などの植物性原料からヨーグルトやチーズの食感を持つ食品ができないかという研究も行っています。豆乳と生姜プロテアーゼという植物由来原料の組合せでカード(凝固物)を作ることはできていますので、今後は植物由来の乳酸菌などの効果も見て行きたいと思います。

余談になりますが、高校生のためのオープンキャンパスでは、面談で色々なご質問にお答えすることが有ります。ある年、花酵母による清酒造りについて熱心にお尋ねになる方がいました。概略をお話し、興味を持ち続けてくれることを祈りながら、その分野の研究では某大学が有名ですとご紹介しました。ところが、今年の新入生にその時の高校生がいて、驚き、また、ちょっぴり嬉しくなりました。実は、この人の他にもお酒を造れるなら入学したいという方々がいました。そういう人達の胸の中で発酵しつつある夢がかなえられる、応用生物であり続けて欲しいと思います。

山下 隆

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