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サクラサク

2013/04/02 | 固定リンク 投稿者: 応用生物学部スタッフ

卒業式,入学式のシーズンを迎え,みなさん新たな出会いや別れがあったことと

思います.

日本のこのシーズンに特にイメージされるものとして,桜が思い浮かぶと思います.

桜は古くから日本人に愛されていて,万葉集にもたくさんの桜を詠んだ歌が存在

します.

例えば,

「足代過ぎて糸鹿の山の桜花散らずもあらなむ帰り来るまで」

足代(和歌山県有田市あたり)を過ぎて糸鹿の山まできてしまった.私が帰るま

で桜が散らないでほしい.

なんて歌は,その時代の日本人も桜を楽しんでいた事がわかる歌だと思います.

この桜,「桜」と言われて真っ先にイメージするのは染井吉野だと思います.実

はこの染井吉野,すべてクローンだと言われているのをご存知ですか?

染井吉野の起源は,諸説あるようですが,江戸時代中期から末期に,染井村(現

在の東京都豊島区駒込周辺)で園芸品種として人工的な品種改良によって確立さ

れたとする説が有力なようです.

元々は古くから桜の名所として知られていた大和の吉野山(奈良県の山岳部)に

ちなんで「吉野桜」として売られていたのですが,吉野山に自生しているヤマザ

クラとは違う品種のため,混同を避けるために染井吉野と呼ばれるようになった

そうです.

日本全国にある染井吉野は種子では増やすことができないため,すべて接木に

よって増やされたものです.

ですので,すべてクローンということになります.

ここで,「種子で増やせない」=「種子を作れない」ではありません.

染井吉野もきちんと種子を作ることはできるのです.

しかし,種子を作るためには別の品種の花粉を受粉させなくてはならず,

そうやってできた種子は,もう「染井吉野」ではなくなってしまうのです.

染井吉野同士を掛けあわせたくても,元々が同じクローンですので,

「自家不和合性」という性質が邪魔をしてしまい,染井吉野同士では種子を作る

ことができません.

自家不和合性とは,被子植物が遺伝的な多様性を確保するための手段として進化

した性質で,自分自身の花粉が受粉しても種子を作らないようにするシステムです.

といっても,すべての被子植物が自家不和合性をもっているわけではなく,自家

和合性の植物もたくさんあります.残念ながら,染井吉野は自家不和合性が特に

強い品種らしく,自家受粉ができません.日本では桜の見栄えを良くする為に桜

を密集させて植えることが多いため,染井吉野以外の花粉が受粉する可能性も低

く,サクランボの実がなることもありません.

クローンである故に,病害が広がったりした場合は,新たに耐性をもたせること

ができなかったりとデメリットもたくさん存在しますが,近くに植えられた桜が

一斉に開花するのは,クローンであるメリットでもあると思います.

桜は目で見て楽しむものではありますが,その成り立ちなんかにも目を向けてみ

ると,品種の違いを楽しんだりと,楽しみ方が増えるのではないでしょうか.

森内

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